立ち上がると少し離れた場所に座り直す。
そして長い数珠を激しく擦り合わせてお経を唱える。
このやり方は、お祖母様に教えてもらい
やっと修得した。

数珠の擦り合わせるタイミングに合わせて
消えていたはずの電球がついたり、消えたりする。
部屋なのに生暖かい風が出てきた。
お経の唱え方も早くしていく。

「何が起きているの…!?」

意味が分からない
まどかのお母さんは、不安そうに言ってくる。
気持ち悪さもあるだろう。

「大丈夫。課長が、そばに居てくれるもの」

まどかは、必死に両親を落ち着かせる。
俺は、お経唱えながらゆいかちゃんに話しかけた。
ゆいかちゃん。君を見えるようにしてあげるから
そこから動かないでね!

全集中して数珠に霊力を注ぎ込んだ。
数珠は、黄金の輝きのように光り出した。
そしてお経を唱え終わると同時に数珠を
ゆいかちゃんに目掛けて投げた。

数珠は、ゆいかちゃんに当たると姿が
うっすらと浮かび上がった。
よし。このまま安定させる!!

俺は、意識を集中させたままコントロールする。
するとハッキリと形まで見えるまでになった。

「ゆいか…?」

まどか達は、唖然としたままゆいかちゃんを見ていた。
目の前に居るのは、亡くなったはずの妹。
あまりの衝撃で状況が呑み込めないようだ。
無理はないけど……。

『お姉ちゃん。それにお母さんとお父さん』

ゆいかちゃんは、何年かぶりに家族に話しかける。
するとまどか、嬉しさのあまり駆け寄り
抱き付こうとした。
しかし、幽霊のゆいかちゃんには、それは出来ない。
ショックを受ける彼女だった。

「まどか。ゆいかちゃんは、亡くなって
物体は存在していない。
俺が一時的に霊力をゆいかちゃんに分け与え
見えるようにしただけだ」