別れを告げるのがこんなにも難しいとは思わなかった。

 私たちが付き合ったきっかけは央介が告白をしてくれたからだけど、私は自分を好きになってくれたことが嬉しくて、必要としてもらえる幸せを感じていた。央介は自由奔放だけど、そこが私にとっては魅力的でいつのまにか好きになっていたのだ。

 それでもいつか央介は私に冷めているだろうとは思っていたし、割り切っているつもりだった。

 早く言わなくちゃ。そう思うのに、どんどん時間は流れていく。

 その間にも央介と会うことは何度もあったけれど、央介は私の気持ちになんて気づくことなくいつもどおりだった。
 おそらく私に別れようと言ってこないのは、まだ真壁さんと付き合えそうではないからなのだろう。

 馬鹿らしいことを続けていくべきではないとわかっている。けれど、どんな反応をされるんだろうと不安になる。
 あっさりと了承されたら、それはそれでショックだなんて自分勝手なことを考えてしまう。そのくらい私は勇気がなかった。


 ————けれど、その日は突然訪れた。


 いつものように五人で昼休みに会議をするために空き教室へ向かっていると、央介と真壁さんと遭遇した。
 親密そうなふたりの雰囲気にそろそろ振られるのかなと考えていると、央介がニヤニヤとしながら私に声をかけてくる。

「女なのに美少女オタクでいじめられてたんだろ? ソイツ」
「え?」

 央介に指差された古松さんは目を大きく見開いて、硬直していた。前に古松さんが話してくれた中学でのいじめに関してどうして央介が知っているのかはわからない。けれど、明らかに悪意を感じた。


「なんのつもり?」

 隣にいる沖島さんが睨みつけると、央介は楽しそうに笑った。

「本当のこと言っただけだろ。まじでキモいよなー」
「そういうのやめろ、谷口」
「あ? 別に石垣に迷惑かけてねーじゃん」

 喧嘩が始まってしまいそうな石垣くんと央介を止めている佐々倉くんに、「遠藤さんも止めて」と言われたけれど、私は言葉が出てこなかった。

 どうして央介はこんなこと言うんだろう。古松さんが今標的にされているのも、私がよく一緒にいるからだ。

 じくりと胃に痛みを感じる。
 央介は私のなにが気にくわないんだろう。それに気にくわないことがあるのなら、私に直接言って欲しい。こんな風に私の周りを傷つけるようなことされるのは嫌だ。