夢の中にでもいるんじゃないかっていう状況に頭を悩ませる。

 水色で統一している私の部屋は八畳くらいの広さで、ベッドと小さな木製のテーブル、本棚などがスペースを取っているため人がふたりいると少し狭く感じる。

 床に放置していた読みかけの雑誌以外は片付いていたのはよかったけれど、私の部屋に染谷くんがいる。しかも、幽霊だ。

 それでも好きな人には変わりなくて、今更緊張が全身に巡ってくる。

 あれから酷く困惑して座り込んでしまった私を見兼ねたのか、落ち着ける場所で話をしようと言われたので自分の家まで来てもらう展開になってしまった。

 いきなり家に呼ぶのは少し抵抗があったけれど、頭がパンクしそうな私にとっては家が一番落ち着いて話せる場所だった。

 念のためもう一度彼を盗み見る。
 ……何度見ても同じクラスの染谷壮吾くんの姿をして見える。


「えっと……染谷くん?」
「ん?」

 彼はやっぱり染谷くんに間違いない。どこからどう見ても、染谷くんで他の誰かではない。
 幽霊なんて生まれてこのかた視たことがなかったので、信じられないという感情ももちろんあった。けれど、目の前で私に触れられないということを見せられたので無理矢理にでも信じるしかなかった。

 しかも、染谷くん曰く私しか彼の姿が視えていないらしい。
 確かに家に帰ってきたとき、お母さんはいつもどおり「おかえり」と言っていた。横に染谷くんがいたのになにも触れてこなかったのだ。

 星型のクッションを抱きしめながら、恐る恐る尋ねる。


「あの、本当に幽霊なんだよね?」
「うん。そうみたい。事件現場で倒れている自分を見たし、今も俺の身体は病室で眠っている」

 想像以上に軽い受け答えをされてしまい、どう反応していいのか困ってしまう。

 つまりは染谷くんの本体は意識が戻っていないだけで生きてはいる。けれど、肝心な意識が霊体化してしまったということなのだろうか。前に読んだ漫画の中の世界みたいで、いまいち現実味がない。


「聞いてもいい?」
「いいよ。なに?」
「染谷くんはどうして階段から落ちちゃったの?」

 私の質問に染谷くんは困った様子でなにかを考え込んでいるみたいだった。
 もしかしたら話しにくいことを聞いてしまったのかもしれないと後悔した直後、染谷くんは苦笑しながら冗談でも話すような口ぶりで言った。