「太陽《たいよう》、教科書貸してくれてありがと」

放課後、太陽に作り笑顔で借りていた教科書を差し出す私。


「……」

お礼を丁寧に伝えているというのに太陽は細い目をして不機嫌そうに無言でその教科書を受け取った。
でも私はそんな態度を微塵も気にしない。


「雫《しずく》ちゃん、また教科書忘れたの?」

ドキィ!

背中から聞こえた声に心臓が大きく飛び跳ねた。

だってこの声は要《かなめ》君!
私は後ろから聞こえた声に、自分の中で一番可愛い私を作ると勢いよく振り返る。

「要君!そうなの!私ってドジだよね!」

「そんなことないよ」

要君は笑顔でさりげなくフォローを入れてくれた。

あぁ……紳士。

「今日も部活?」

「そうだよ」