「よっ、お待たせ。お前、目印になって良いな。」
「そりゃよかった。」
「憎たらしいぐらいに、イケメンになりやがって。…姉ちゃんのどストライクじゃねぇかよ。」
「こら待て。余計なことを言うんじゃない。」
「代わりに言ってあげた。」

否定はしない。確かに、どストライクだけどもだ。今していい発言ではない。本人がいる前で、さらっと何を言っているのだろうか。馬鹿か。馬鹿なのか此奴は。気まずくて、ハルの顔が見れない。

「へぇ、そりゃ良かった。」
「恐ろしいぐらいに、好み的中してるんだが。」
「待って。本当、余計なことを言うな。」

弓弦を睨んでも、弓弦はニヤニヤしながらハルを見ている。今日は、やけにからかってくるな。もう既に、酔っ払っているんじゃないだろうか。

これ以上その場にいると、他にも変な事を言いそうなので、弓弦の腕を引っ張って店の中へと入る。弓弦が決めてくれたお店で、男女比率的には女性の方が少し多い。でも、男性でも入りやすそうなお店で、仕事帰りの男性陣らしき人もいる。20歳になって、1年も経っていないのに色んな飲み屋を知っているらしい。弓弦とご飯に行く時、昼は大抵私が決めるけど、夜は弓弦がお店を決める。

それぞれ飲み物と、適当につまみをいくつか注文するが、弓弦のニヤニヤは一向に止む気配はない。

「遙は、今一人で暮らしてんの?」
「んー、まぁそうだな。弓弦は、何で一人暮らし?」
「姉ちゃんと暮らしてたら、彼女連れ込めないだろ。」

本当は、部屋に彼女を連れ込むなと注意されている。でも、こっちに来て早々連れ込んでたし、今や彼女と半同棲中。お母さんに、弓弦の監視を頼まれているけど、巻き込まれたくないので知らないふりを通している。部屋に連れ込むのは、年頃だし避妊さえしておけば良いと思う。