「宿題見せてー」

「はぁ? 自分でやれよ」


朝一番の教室。

色とりどりの会話が飛び交う、そんな中。

あたしはひとり、頬杖をつきながら窓の外を眺めていた。


グラウンドのすぐ隣にある、真ん中より少し後ろの席に座って。

とっても静かに。

すました顔で。

ひっそりと。


だからきっと、誰も知らないだろう。

今あたしの心の中が──。


まだかなぁ……?

もう来るかなぁ……?

早く会いたいよぉ〜。


──ほんとは、こんなにも騒がしいだなんて。


気を抜いたら完全アウト。

一気に顔の筋肉が緩んじゃう。



──サァァ……。


その時急に風が吹いて、爽やかな緑を揺らした。


さわそわ、そわそわ。

落ち着きのないその様子は、あたしの心をそっくりそのまま映したみたい。



“5月17日(水)”


窓から視線を外すと、黒板の右端の文字が目に入った。


もう5月も半分過ぎちゃったのか……。

入学式から1ヶ月ちょっと?

早す──。


「あっ!」