【プロローグ】

「陛下。今、なんと……?」

「殺せと命じたのだ。我がエルレンシア王国の第一王女、レイリアを七日後、そなたの手で殺すのだ」


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ここは大陸の南に位置するエルレンシア王国。

長きにわたる歴史あるこの王国に、一人の王女がいた。

華やかな金色の長い髪に、碧い瞳をした王女の名をレイリア・エルレンシアという。

七日後に十八歳の誕生日を迎える彼女は、いつもと変わらない日常の一環として、王城の庭を散策していた。


「ルイ! 見て、もうすぐ花が鮮やかに咲きそうよ!」

「そうですね。きっと姫様の誕生日には一番の見頃となっているでしょう」

「そうね。ふふ、とても楽しみだわ」


そう言って花に顔を寄せ、香りを嗅いだ。

その様子を数歩離れたところで、一人の青年が穏やかなまなざしをしてレイリアを見守っていた。

彼の名はルイ・サウスエクス。

漆黒の髪に、高貴な紫色の瞳をした美しい青年であった。

彼はレイリアの専属護衛騎士として常日頃からレイリアの傍に控えていた。

風が吹き、レイリアの長い髪が背中へと流れていく。

髪の毛で隠れていた胸元があらわになると、左の胸に鮮やかな花の形をした痣が姿を見せた。

レイリアは顔を赤くして髪の毛でその痣を隠すと、ルイの方へ振り返り、少し照れくさそうにして笑った。


「胸の痣、小さいころからずっとあるわ。花の形をしているなんて不思議よね」

「その痣も含めて姫様です。お気になさらないでください」

「……ふふ。気にしていないわよ。ルイは真面目ね」


何事においてもルイは真面目で、なかなか冗談が通じないところがある。

だがそうやって真剣に受け止めてくれる彼に対し、レイリアは想いを寄せていた。

彼はとある貴族の家で育ち、騎士になるための学校を首席で卒業して以降、ずっとレイリアの専属護衛騎士として傍にいた。

見眼麗しい外見に目を奪われたというのも惹かれた理由の一つだが、恋を自覚したのはルイと出会ってはじめて迎えた誕生日であった。

様々な人物から宝石やらドレスやらと、多くのプレゼントが贈られてくる。

下心が見えるプレゼントの数々にため息をついていたレイリアに、彼は花束を渡してきた。

極彩色の花束を手に取ったレイリアを見て、彼は人懐っこい顔をして笑ったのだった。


『やはり姫様には鮮やかな花がお似合いですね』


真っすぐに、レイリアのことを想って選んだのだと伝わってきた。

そう意識した瞬間、レイリアは恋に落ちていた。

姫と騎士。

結ばれる運命ではないとわかってはいるものの、このまま彼と共に時を過ごしたい。

レイリアは再び極彩色の花に触れ、そのやさしい香りを感じながら胸を締め付けるのであった。


――そしてそんなレイリアを、彼は苦しそうな顔をして見つめるのであった。