病院から退院したのはその翌日の事だった。異常が見られなかったが一応再検査をと薦める医師の言葉を跳ね除け、半ば強引に連れ戻されるような形で二階堂邸内の離れに閉じ込められた。

 医師やナースステーションでは愛想良く接していた夫人は、病院を一歩出て繭子を閉じ込めるまでの間終始無言を貫いた。
 繭子が入院したせいで夫人は怒りを通り越して小言を言う気にもなれないのだ。その無言が何よりも恐ろしかった。

 四畳一間の物置小屋を改装して作られた部屋の中は冷たい風が吹き荒ぶ。がらんとした空間に使い古された毛布を被りながら身を縮こませる。また、この家で自分は居ないものとして扱われる。繭子にとってはこれが日常だ。