カフェを後にした三人は再び車に乗り、帰路につく。最初は人の多い場所に出向く事に抵抗があったが、鬱屈していた気持ちから良い気分転換になった。

 見ず知らずの自分にどうしてそこまでしてくれるのだろう。感謝の気持ちを声に出して伝えたかった。口から漏れるのは声にならないすかすかの音。喋れない事がこんなにももどかしい事だとは思いもしなかった。

「(早く治ってくれたらいいのに……)」

 都会で見る日暮れの空は、狭く感じた。
 今まで暮らしていた柊市とは比べ物にならない賑やかな街並み。

 ふと脳裏によぎるのは、入院している祖母の顔。会いに行きたい気持ちはあるが、ここから柊市に辿り着くまでの交通費は十五歳にとって安いとは言えない金額である。

 夕暮れが迫り街中の街灯が付き始めた頃、その感覚は唐突に襲った。

 あの時感じたような嫌な空気。

 それは車が通り過ぎた路地裏から発している。それに気付いたのは繭子だけではなかった。