「まずは、なんでハバキリの欠片を集めてるか話さないとね?」

 みんなぜんざいも食べ終わって、美味しいお茶でホッと一息ついてるとき、那智がそう持ちかけた。そんな声に世莉は「え? ……あ、えと」と愛想笑いで返す。

「それは……、もういいかなぁと」

 もうすでに彼女の中では解決していることだで、もうそんなのは必要ないのだ。そう答えた世莉に、那智はなぜか陰りのある笑みを見せた。

「ありがとう。でもそれなら僕の事も『那智』って呼んでもらえると親密度も増す気がしない?」

「へ? や、え?」

 右斜め46°辺りの話を振られて、世莉の頭には『?』でいっぱいだ。

「だって神威だって神威さんって呼んでもらってるし、僕だけ『御厨さん』は壁を感じるよ。確かに僕は、世莉ちゃんや神威のお父さんくらいの年ではあるけど……」

「やっ、それは──」

 それは決して区別してるわけでも、壁を作ってる訳でもないのだけど……。慌てる世莉に、神威が「はっ」と笑い声をあげた。

「俺の名字、忘れてたりしてな?」

「……」

 的確な神威のツッコミに、世莉は言葉を詰まらせてしまった。

「……マジか、この女」

「なんだ! そういうこと? うんうん、神威の名字は滅多に無いからね。因みに『御巫《みかなぎ》』だけど、もう神威でいいし、僕も那智でいいから!」

「私は瑠璃で!」

「私は玻璃で!」

「僕はアキラね?」

 続く三人に世莉は苦笑いしながら頷いた。そもそも、瑠璃・玻璃の名字なんて知らない。けれど、御厨が父親なら、名字は御厨かもしれない。なんて考えていると、那智も「うーん」と何やら思案顔。

「でも『那智さん』だと堅苦しいし、『那智くん』じゃ照れちゃうし……、『なっちゃん』……、うん、それがいい!」

「いや……」

 それはちょっと呼べないです。

「なら私は『るー』で!」

「私は『はー』で!」

「なら僕は、『あー』? え? 変じゃない?」

 心の中で滝汗の世莉の前で、那智に対抗する二人はとても可愛く、天然のアキラには脱力しそう。もうなんでもよくなってくるけれど、流石に『なっちゃん』は無理だ。

「えと、せめて『那智さん』で。あの、ほら、神威さんも『神威さん』だし」
 終わりそうにない呼び方論争に、世莉がそう提案すると、那智はがっかりしたように「そう? それなら『那智さん』で」と、なんとか納得した。