南海樹奈は太陽みたいな子だった。いつも群衆の中心にいて、その輝かしい笑顔で周りの人を明るく照らす。
何度も彼女に引っ張られて俺の日の当たる場所に連れてこられた。俺はそんな明るい場所が似合わないのに、彼女はいつも笑って俺の手を引く。

どこか安心していた。この子がいなかったら俺は根暗で臆病でだらしなくて、本当にどうしようもない人間だった。
でも彼女が傍にいることで、”彼女の幼馴染”という価値だけは与えられた。

それがなかったら、きっと俺は救いようのない人間だった。




『私、今誰かと付き合おうとか考えてなくて、きっとこの先もそういう気持ちになることはないと思うから。だから沼田くんの気持ちには応えられない。ごめんなさい』


クラスの学級委員長を務める彼女が委員会に出るため、それが終わるのを待つ。
本当は先に帰ってゲームでもしたいのだが、放課後になって送られてきた彼女からのLINEのメッセージに目をやる。


【先に帰ったら颯のゲーム機壊すかんなー!】


怖い。樹奈ちゃんの場合本当にしそうだから怖い。だから俺には待つしか選択肢はなかった。
そもそもどうして樹奈ちゃんは俺と一緒に帰りたがるんだろう。彼女には友達も多いし、その子たちと寄り道して帰るという考えもあるだろうに。それなのに彼女は毎日のように俺と下校する道を選ぶ。

何故、と思いつつも嬉しく思う自分が情けない。

彼女を待つ間、誰もいない教室で鞄を枕にして瞼を閉じる。窓の外からは野球部の掛け声が聞こえ、校舎の中からは吹奏楽部の演奏が微かに響く。
空っぽだな、本当に何もない。俺にはこういう時間を一緒に待ってくれる男友達もいなければ、部活に入るという行動力もない。

本当に、彼女しかいない。

すると突然教室のドアが開く音がして、顔を上げるとクラスの中でも派手な男子たちが中に入ってきた。