夜が来るのが、怖かった。


今夜を迎えると明日まではきっと瞬きをするように一瞬に感じてしまうと、なんとなくわかっていたから。


それでも呆気ないほどに淡々と時間は過ぎていき、夜が訪れるのを見せつけるように沈んでいく夕陽を恨めしく思いながらため息を繰り返していた。


「……じゃあ、行ってくるね」


いつものように見送ってくれたツキを自室に残して家を出ると、どんよりとした空が広がっていた。


予報では降らないはずだけど、この様子だとひと雨来るような気がする。


傘を忘れたことを後悔しながら重い足取りで歩いて公園に着くと、いつもの場所にクロの姿はなかった。


時計はまだ二十時前を指していて、彼が来ていないのは私が約束の時間よりも早く着いたせいだと気づく。


ため息混じりにベンチに腰を下ろすと、雲に覆われた夜空を見上げた。


ゆっくりと移動する雨雲の隙間から、満ちる寸前の月が見え隠れしている。


それを見ていると、『次の満月まで』という約束を交わしている私たちが会うのは明日で終わりなのだと、嫌というほどに突きつけられているような気がして……。


「千帆」


寂しさと切なさに唇を噛み締めながら視線を落とした直後、少し離れたところからクロの声が聞こえた。