ほとんど眠れないまま迎えた翌日は、朝からずっと顔が引き攣っていたかもしれない。


堀田さんと中野さんに何度も心配されたけど、私はやっぱり胸の内を話すことはできずに笑顔を繕った。


気に掛けてくれるふたりに打ち明けられないことは、申し訳なくて心苦しくもあった。


だから、心の中で何度も謝罪を紡ぎ、精一杯笑って見せた。


「ただいま、ツキ」


「ニャア」


部屋のドアの前で出迎えてくれたツキを見ると気が抜けて、その場にしゃがみ込んだ。


途端に駆け寄ってきて「ニャーニャー」と鳴くツキに笑みを向け、体をひと撫でしたあとにツキを抱き締める。


「明日なんて来なければいいのに……」


ようやくホッとできたような気がした直後、自然と落ちていたのはそんな言葉だった。


明日が最後の日なのだから、明日が来なければ別れは来ない。


そうすれば、クロとの時間をもう少しだけ守ることができるかもしれない。


頭の中で躍る、安直な思考。


その子どもじみた内容に、ため息と嘲笑が漏れた。


「……こんなの、私らしくないよね。でも……誰かとの別れがこんなにつらく感じるなんて、知らなかったよ……」


震える声で紡いだ言葉は、ツキの小さな鳴き声に包まれて消えた。