てっきり真剣な顔をしているのだと思っていたクロは、目が合った直後にプッと吹き出したけど……。


「なんて顔してるんだよ。いっぱい笑う練習したのに、もう忘れたのか? ちゃんと笑えるようになったと思ってたけど、まだまだだな」


すぐに瞳を伏せるようにした彼の表情が微かに曇って、眉を寄せながら苦笑が零された。


真っ直ぐに絡み合う視線が呼吸すら奪うようで、まるで溺れたように胸の奥が苦しくなる。


クロの苦笑には心配の色が混じっているような気がして、こんな時にそんな顔を見せないで欲しいと思う反面、私のことを気に掛けてくれることに喜びを感じてしまう。


「だったら……これからも、ちゃんと教えてよ……」


だから、彼に縋るように小さく訴えた。


心に秘めた想いも、大きくなり続ける寂しさも、素直に口にできない。


そんな私の、精一杯の言葉。


「なに言ってるんだよ。らしくない顔しないで、最初の頃みたいに強気でいろよ」


だけどやっぱり、僅かな沈黙を経て返ってきたのはたしかな拒絶で、それは刃となって胸の奥深くに突き刺さった。


「明後日には、ちゃんと笑ってくれよ? 最後に心配事を残して行きたくないんだ……」


そして、ひと呼吸置いて、クロが静かに言った。