学校を出た未亜は、真っ直ぐ家に帰る。つもりだった。
しかし昨日と同じ公園に近付けば近付くほど、少年と子猫のことが気になってきたのだ。

「ちょっとだけ」

自分に言い訳をしながら、公園に足を踏み入れる。
昨日が雨だったからか、地面がほのかに柔らかくなっていた。

少年のいた場所をちらっと見てみると、そこには昨日と同じように金髪学ランの不良少年が座っていた。
膝に子猫を乗せている。遊んでいるみたいだ。

「こんにちは」

「あぁ?」

声を掛けると、少年はいかにもガラの悪そうな声を出した。
そして未亜のことを思い出したように「お前……」と呟く。

未亜は少年の傍にしゃがみ、子猫に触れた。大きな丸い目が未亜を見つめる。可愛い。


「……なぁ」

子猫に夢中になっていると、低い声が前方から聞こえてきた。
反射的に顔を上げると、鋭い目が向けられた。

「傘、持ってきてねぇんだけど」

「傘?」

意外な言葉に思わず繰り返す。

もしかして、傘を返してくれるつもりなのだろうか。
見かけに寄らず、律儀な性格なのだろうか。

「もらっちゃっていいよ」

「いや、あんなポップな傘使えねぇし」

そう言われて、傘の柄を思い出す。
橙色と白の水玉模様だった。

このいかつい見た目でそんな傘を持っているのは確かに少し違和感があるような。
未亜がそんな想像をしていると、少年は再び口を開いた。

「つーか」

少年が言いづらそうに顔を歪め、「あー」と突然の発生練習。
未亜は不思議そうに首を傾げる。

「……た、助かった」

よほど声帯に自信がないようで、発声練習をしてもなお少し掠れた声で言われる。
未亜はにっこり笑って、少年の鋭い目を見つめた。

「それはよかった」

そして遠慮なく子猫の頭を撫でる。
少年は何も言わずにその光景を見ている。