不幸中の幸い、というべきなのか、リュウヘイ君は姿こそ犬になってしまったけれど、人間の言葉を話すことができる。

 人間の世界のマナーも守ることができる。

 わたしはリュウヘイ君の背中やあごやお腹なんかを撫で、その毛触りを確かめる。昨日まで人間だったとは思えないほど、本当に犬の感触をしている。どうやってこんな毛並みが柔らかくなったんだろう?

 人間だったころのリュウヘイ君の髪は本当に硬質だったのに。

 こうして土曜日の午後はリュウヘイ君の新しい体を手や頬で触れているだけでまるまる時間が過ぎた。

 日曜日も同じように過ごした。

 そうしているうちに、ほんの少しではあるけれど、わたしの方もリュウヘイ君の新たな姿に馴染むことができたような気がするのだ。

 考えてみればこれだけ夫の体に自分の体を始終密着させるなんて、いつ以来のことだろう。