わたしの方はと言えば、特にそんな直感は働かなかったのだけれど、滞在していた一週間、毎日ひっきりなしに話しかけられているうちになんとなく「いい男の人だな」くらいには思っていた――ような記憶がある。

――俺たちは、岩山荘に感謝しなくちゃあいけないね。イワヤマさんは、俺たちにとっての神様みたいなもんだ。

 それが交際し始めてからのリュウヘイ君の口癖だった。

 それから交際が進むにつれ、イワヤマさんはいつしかわたしたち二人だけの神様となった。

 たった二人しか信者のいない、ひっそりとたたずむ神様。

 リュウヘイ君に、わたしが「妻にすべき人」であることを啓示した神様。

 だから神様の世界ではまだまだイワヤマさんは新米なのだ。

 だが新米とはいえども、その力を軽視することはできない。

 なぜならイワヤマさんは本当にリュウヘイ君の望みを叶えてしまったのだから。