「もう使えるほどお金残ってないもん」

『・・・待って、何に使ったの』

「えっとね、ぶどう飴でしょ?御守りに、お父さんに金箔入りの耳掻き、お母さんによくわかんない高いマグカップに、栗に、パンダのお面に、あとは…」

『もういい。もういいから喋んないで』

「え!なんでよ。まだあるもん」

『ハルさあ、もうほんとさあ・・・ほんとやだ』





弱ったように深く息を吐き出すアオは本気で頭を悩ませている。お土産用の大きめな鞄を用意していた自分を褒めなければと思っていたのでその反応の意味がわからない。



アオの具合の悪そうな顔に心配になり、覗き込む。眉間にシワを寄せたアオが私の顔面を鷲掴みにする。





『ハル、あといくら残ってるの』

「えっと、1080円。電車代はもうチャージしてるあるから、偉いでしょ」

『ぶわぁーあか』

「怒られた!」





アオは辛辣に言葉を落とし、さっさと私の腕を掴んで歩き出す。その顔は不機嫌、呆れ顔、後はほんの少し自分を責めているようなそんな顔。





『ハル、買い物する時は絶対に俺を呼ぶこと。わかっ、っ、』

「眉間にシワ寄ってます」




私はそんなアオをどうしたものかと、不機嫌な顔をこちらに向けた拍子にその口の中にぶどう飴を突っ込んだ。



それに驚いたアオは、口の中に入るぶどう飴の棒を引いて、確認し、そのまま私に視線を流す。





「美味し?」

『・・・もーほんとこれだからハルはいやなんだよ』

「は?なんでよぶどう飴あげたじゃん!美味しいでしょ?ね?ね?おいこら」

『あーはいはい美味しい美味しい』