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一晩で整理がつくはずもなく次の日になってしまった。環奈は朝練でいないけど嬉しいはずの優との登校もなんだか憂鬱だ。

「昨日遅くなってごめんな。あれから何回か電話したんだけどなんで電源切れてたの?」

そういえば家に着いたあともスマホを触る気力もなくて、電源を入れたのは今朝のこと。

「……なんかスマホの調子わるくて」

「そうなの?環奈もずっと気にしてたよ。美和がなにも言わずに帰るなんて珍しいからなにかあったのかなって」

ただの友達なら気にしないところも過ごしてきた月日が長いぶん、少しの変化や違う行動をするとすぐふたりに気づかれてしまう。

だから時々、幼なじみは面倒くさい。


「ちょっと用事思い出しちゃって。慌ててたから……ごめん」

私だって本当はこんな嘘なんてつきたくない。

キスをしてたからなんだっていうの?その場面を見たわけじゃないし、ただ話を耳にしただけなのに。そもそも本当にふたりだったのかどうかさえ定かではないのに……。

「あ、美和。髪にゴミが……」

優の手が私に触れる寸前とっさに体が反応して、その手をパシッ!と叩いてしまった。

「あ……」と声を出したのは私の方。

優の手をはらってしまうなんて……。

いつもならキュンッてくるはずじゃん。ラッキーって喜ぶはずじゃん。それなのに……。

「ご、ごめん。ビックリした?ただゴミを取ろうとしただけだよ。ほら」

優は笑っていたけど少し戸惑っていた。

そのあともなんだか気まずくて優の話に私はうなずくだけ。

なんで私は優の手をはらっちゃったの?

理由なんてわかってる。


――『神谷くん顔に手とか添えちゃってさ。めっちゃ絵になってた』

あれを聞いてから私はその光景を想像してる。優の大きな手が優しく環奈に触れて、そしてふたりで照れたりして。

公園でキスをしていた人が優じゃなければいいと思いながらも、想像の中ではみょうにリアルで。

だからその同じ手で触れられることが苦しくて、それを拒否してしまった。