「和食は好きだっただろう?」


掘りごたつのテーブルを挟んで、向かいには兄の修平がいた。
会うのは1年ぶりくらいだ。盆暮れも帰らない私が悪いのだとは思うけれど。

11月の頭、未來さんの結婚式まで一週間と少しといったこの日、私は職場近くで兄と夕食を共にしていた。


「うん。好きです」


私は頷き、治部煮椀に箸をつける。

兄に押し切られる形での会食は二子玉川駅近くで行われている。兄は、わざわざ近くの加賀料理の小料理屋を予約してくれた。


「沙都子が住んでるのは学芸大学駅だよな?あっちにも良い店があるんだ」


「ごめんなさい。どうしても仕事がギリギリになりそうで」


私はやんわりと答える。兄は私の部屋の近所がよかったようだ。
帰りに私の部屋に寄って行こうとする下心が透けていたので、敢えて職場の駅に指定した。

兄は、私を格別に愛している。

それは……たぶん、そういう意味も含んで。