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ごくたまに夢を見る。
中学生の頃、高校生の頃、大学生の頃。
そんな昔の夢。
たいてい私はひとりでいる。
孤独が好きなのではない。孤独の方が安心するというだけ。
誰かと通じ合うことは、私にはできないだろう。それなら、期待しないようひとりでいたい。
時に、夢には兄が登場する。
夢の中でも兄は私を愛していて、一転私の夢は悪夢に変わる。
『沙都子は俺に頼ればいいんだよ。俺のそばにいれば間違いないんだ。不器用なおまえに人生はつらく厳しいものだろう。だけど、俺ならおまえを大事に囲ってやれる』
兄の言葉は悪い呪いみたいだ。
『出来ない子どもでいなさい』
そう言われているようだ。
幼い頃から当たり前に与えられた深すぎる愛情が、私を追い詰める。
目覚めて、額と背中に冷や汗をかいていることに気づいた。
ああ、今日は兄との約束の日だ。
カレンダーが目に留まり、私は深くため息をついた。